妊娠がわかるころと前後して、匂いに敏感になる、胃がムカムカするなど、多くの妊婦さんでつわりの症状が出ることがあります。
症状に個人差はありますが、いつから始まり、いつ終わるのか、またよく見られる症状や対処法などについて、詳しく説明します。
気持ち悪いつわりを軽減する対処法
つわりの原因は?
つわりの原因は医学的にまだはっきりとわかってはいません。ただ、有力な説としては、妊娠によって体の中で起こる急激な変化、たとえばホルモン環境や代謝の変化に対して、体が適応できないためといわれています。
また、母体がおなかに宿った胎児を、自分の体を構成するタンパクとは別ものとして拒絶するために吐きけなどが起こるというアレルギー説、ホルモンバランスの急激な変化によって自律神経が不安定になる説などもあります。
さらに、妊娠や出産に対する不安や悩みなど精神的なものも強く影響すると言われています。
この様につわりが起こる仕組みはかなり複雑なようです。
つわりの症状は?

つわりの症状は妊婦さんによってさまざまです。
代表的な例で言うと、何を食べても吐いてしまう吐きづわり、何か食べていないと気持ち悪くなる食べづわりのほか、胃もたれ、食欲不振、においに敏感になる、体がだるい・眠い、唾液が出る、頭痛がする、イライラするなどがあります。
これらはすべて、ホルモンの急激な変化によって生じる体の生理的な反応です。症状は個人差が大きく、なかにはつわりの症状がまったくない人もいます。
人によって症状が違うのは、ホルモンの分泌量の違いや、精神的な状況、妊娠時の体の状態もかかわっているのではないかと考えられています。
つわりの時期、期間は?
つわりは、早くて妊娠4週ごろに始まり、ピークは妊娠8~10週ごろ。多くは妊娠12~13週ころまでには落ち着き、遅くてもほとんどの妊婦さんが妊娠16週には、おさまります。
つわりをラクにする方法
1回に食べる量を少なくして、なるべく何回にも分けて食べましょう。食べ物を冷やすと、食べやすくなるのでおすすめです。
特に吐きづわりが続いていると、「赤ちゃんに栄養が行き届かないのでは?」と不安になる方もいらっしゃると思います。
でも安心してください。この時期の胎児はとても小さく、ママがご飯を食べられなくても胎児は育ちます。胎児に異常が起こることもありません。無理に食べようとせず、ゼリーやアイスなど食べられる物、食べても吐かない物を食べられる量だけ食べましょう。
食欲がなくても、脱水症状を避けるために水分はしっかりとりましょう。体の電解質を補うスポーツ飲料や、糖分を含んだ果実ジュースもいいですが、カロリーのとりすぎには注意しましょう。
吐きづわり、食べづわりなど、どんなタイプのつわりの人も、必ずラクになれる方法はあります。つわりの時期は我慢せず、周囲に上手に甘えて、少しでも症状が軽減できる方法を探していくことが重要です。
これは注意!妊娠悪阻の診断と治療
つらいけれど、なんとか飲食ができて、通常の生活ができるのであれば、それはつわりの症状の範囲内です。
でも、吐きけがひどくて水を飲むことさえできず、1日の排尿回数や尿の量が減ってしまったり、急激な体重減少が見られたときには「妊娠悪阻(にんしんおそ)」と診断されます。日常生活に支障をきたすような場合は、点滴治療が必要になります。

重症かどうかの判断基準は?医師に相談する目安は?
吐きけが強くて水も飲めない
常に吐きけが起こり、食べ物も水も口にできないような状況が何日も続くときは要注意。激しい嘔吐(おうと)を繰り返すうち、胃液を吐いたり、吐いたものに血液や胆汁が混じることもあります。
体重が5~10%ほど減少した
数日の間に自分の体重の5%以上が減ったときは要注意(体重が50kgであれば、2.5kg以上)。吐きけとともに、めまいやふらつきを感じるケースもあります。
トイレの回数、尿の量が減った
トイレに行く回数が減り、トイレに行っても尿が少量しかでないのは水分補給ができていないサイン。脱水症状を起こしている可能性があります。尿検査で、尿中に体内の脂肪が分解されてできた“ケトン体”という物質が出たら、つわりによる低栄養と脱水症状が心配です。点滴治療が必要になります。
上記の症状のうち、1つでも当てはまるものがあったら、つわりが重症化して「妊娠悪阻」に移行している可能性があります。
妊娠悪阻の治療は点滴
生理用食塩水(水と電解質)、ブドウ糖、ビタミンB1・B6などを含む点滴を行います。吐き気止めや漢方薬を使う場合もあります。
症状がとくに重い場合は腎臓や肝臓への影響を調べたり、ウェルニッケ脳症や肺動脈血栓塞栓症を合併しないように慎重に治療を行います。
まとめ
妊娠するとほとんどの人が経験する「つわり」。
症状や乗り切り方も妊婦さんそれぞれの方法がきっとあります。妊婦さんにとってはつらい時期ですが、必ず終わりは来ます。
できるだけのんびりゆったり過ごして、貴重なこの時期を穏やかに過ごしましょう。
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